ロールオーバーによるコストがかからないという誤解~価格調整額とアービトラージを理解する

先物を対象とするCFDに発生する価格調整額とは

先物を対象とするCFDに発生するものであり、先物を対象としないCFDにはありません。
先物は限月(期限)がありますので、清算日には当月の先物は消滅してしまいます。するとその先物の価格を参照していたCFDは翌限の先物価格を参照することになります。
価格差がある場合にはその価格差を埋めるために調整金として受渡されるものが価格調整額であり、価格調整によって損益に違いはありません。

価格調整の仕組み

価格が10ドルのCFDがあったとします。価格調整が行われ11ドルに上昇。
この場合CFDの買い玉があると価格調整額としてマイナス1ドルが加算されます。
10ドルから11ドルへ1日で1ドル上昇し含み益となりますが価格調整額がマイナス1ドルありますのでこの時点では相殺されてプラマイゼロですね。
売り玉保有の場合はプラス1ドルされますのでこの場合も相殺されてプラマイゼロになります。
従って確かにロールオーバーによるコストはかかっていないように見えます。

このことからGMOクリックのCFDはロールオーバーによるコストがかからないから長期買い投資に向いていると言われる事もあります。

そもそも先物のロールオーバーによるコストがかかるとは

先の例で言えば10ドルで売り決済して11ドルで買い直すのでここで1ドルのコストがかかる。一般的にはこのような期先が高い場合は常にコストがかかることをコンタンゴによる減価と説明されます。
コンタンゴ=順ザヤの先物を長期間買い続けるとなかなか利益をあげづらいことから順ザヤの先物買うべからずという相場格言もあります。

コンタンゴによる減価の本当の意味

しかし、実際に計算してみると分かりますが、コンタンゴ状態では新規買値よりも決済値が安くなる事が多いからであって一般的な説明のロールオーバーでコストがかかっているからではありません。
現実にコンタンゴ状態でも価格が上昇し続けるような場合は買い続けても利益になる場合もあります。しかし価格が長期間に渡って上昇し続けるような商品は多くないですし、そのような商品はコンタンゴではなくバックワーデーション=逆ザヤのほうが多いです。
先物の限月間の価格差をコストとは考えずサヤが開いていると考えるとCFDの場合もサヤは開いています。
これをコストと考えなくても現実に価格調整額が受渡されているのは事実です。
コンタンゴの場合CFDを買っていれば口座にマイナスされていきます。これをコストと呼ぼうが呼ぶまいがコンタンゴが続く限りマイナスが積みあがっていきますので、これを上回る先物価格の上昇がなければ買っている人は利益にならないのです。
逆に言えばそのコストマイナスのサヤ分を上回る上昇があれば利益になることがあります。

CFDでも必ずコンタンゴによる減価を受ける

従って価格調整で相殺しているからロールオーバーによるコストがかからないとしても、価格調整はいわば疑似ロールオーバーをしているようなものであって、先物コンタンゴによる減価は必ず受けるわけです。

ということはすなわちGMOクリックのCFDは長期買い投資に向いているとは必ずしも言えません。
このことは先物を対象とするCFDであればいずれのCFDにも当てはまる話であってGMOクリックのCFDに限った話ではありません。

ロールオーバーしないから(価格調整をするから)コストがかからないのかVIXのCFDでみてみる

GMOクリックには米国VIという名称でVIX先物のCFDがあります。VIX先物はコンタンゴが圧倒的に多い性質を持つので分かりやすいのでこれを使って、過去の価格調整額の履歴から本当にロールオーバーしないのでコストがかからないか検証してみましょう。
コストがかからないとすると、買っている場合は単純な買値と現在の値段の差の損益しか生じないことになります。

売り 買い 期近 期先 レート
2018/5/9 844 円 -844 円 14.81 15.58 109.7
2018/4/11 -652 円 652 円 20.08 19.47 106.93
2018/3/14 -106 円 106 円 17.37 17.27 106.25
2018/2/7 -3,860 円 3,860 円 23.4 19.87 109.36
2018/1/10 1,114 円 -1,114 円 10.58 11.58 111.42
2017/12/13 1,620 円 -1,620 円 10.51 11.95 112.53
2017/11/8 1,616 円 -1,616 円 10.86 12.28 113.87
2017/10/11 1,596 円 -1,596 円 10.75 12.17 112.42
2017/9/13 1,549 円 -1,549 円 11.53 12.93 110.65
2017/8/9 1,493 円 -1,493 円 11.71 13.07 109.85
2017/7/12 996 円 -996 円 11.52 12.4 113.25
2017/6/14 865 円 -865 円 11.47 12.26 109.52
2017/5/10 1,097 円 -1,097 円 11.51 12.47 114.32
2017/4/12 -1,481 円 1,481 円 16.26 14.91 109.71
2017/3/15 1,633 円 -1,633 円 12.27 13.71 113.42
2017/2/8 1,555 円 -1,555 円 12.59 13.98 111.93
2017/1/11 1,961 円 -1,961 円 12.52 14.22 115.39
2016/12/14 2,246 円 -2,246 円 13.41 15.33 117.02
2016/11/9 866 円 -866 円 14.88 15.7 105.64
2016/10/12 969 円 -969 円 16.30 17.23 104.28
2016/9/14 18.36 18.89 102.39

※売り、買いの下にある価格ははCFDを売っていた場合、買っていた場合価格調整日をまたいでそのまま持ち越した場合に発生する価格調整金です。また、この額は売買単位ごとの金額で、売買単位は10です。

2016年の9月14日に18.89ドルで売り建てたとします。2018年の5月9日には15.58ドルですからプラス3.31ドルになります。売買単位は10なので33.1ドルの含み益です。
では、買い保有を続けていた場合は売りの逆になるのでマイナス33.1ドルの含み損です。ロールオーバーによるコストがかからない(自動でロールオーバーしてくれるから)と考えるとこれ以外の損益はないということになりますが、実際は売り保有をずっと続けていた場合は15921円のプラスの価格調整額が、買い保有の場合は逆に15921円のマイナスの価格調整額が口座に記載されていることになります。

表に記載されている期近と期先の価格差が受け渡されますが、売りと買いで±が逆になっています。また、期近と期先の価格のどっちが高いかによってこの±が変わります。
期先が高い状態の時は買いにマイナス、売りにプラス
期先が安い状態の時は買いにプラス、売りにマイナス

されているのが分かると思います。
米国VIというCFDは圧倒的に期先が高い(コンタンゴ)場合が多いので買い続けるとマイナスが積みあがります。
一方では利益、他方は損失なので確かにコストがかからないと解釈できなくはないですが、では価格調整を受けないようにした場合はどうなるでしょうか。

価格調整を回避した場合の損益はどうなるのか?

仮に価格調整日に持ち越さない場合(決済して買い直す)はどうなるでしょうか。ある意味ロールオーバーを自分でやってりうようなものですが。※便宜上表の期近と期先の価格をそのまま使用します。

新規買い 決済 損益
15.58
19.47 14.81 -4.66
17.27 20.08 2.81
19.87 17.37 -2.5
11.58 23.4 11.82
11.95 10.58 -1.37
12.28 10.51 -1.77
12.17 10.86 -1.31
12.93 10.75 -2.18
13.07 11.53 -1.54
12.4 11.71 -0.69
12.26 11.52 -0.74
12.47 11.47 -1
14.91 11.51 -3.4
13.71 16.26 2.55
13.98 12.27 -1.71
14.22 12.59 -1.63
15.33 12.52 -2.81
15.7 13.41 -2.29
17.23 14.88 -2.35
18.89 16.30 -2.59
合計 -17.36

期先を新規買いして次の期日に決済し、また期先を新規買いしていくことを繰り返した場合です。いわゆるロールオーバーしているのと変わりはありません。新規買いの時は期先ですが、次の期にはそれが期近に変わります。
合計-17.36ドルになります。売買単位は10ですから173.6ドルの損失になります。現在の為替レート110円ほどで換算すると19000円ほどの損失になります。

順ザヤの先物買うべからず

最初の買い建値は18.89ドル、現在15.58ドルで単純な価格だけでみると3.31ドルしか下がっていませんが順ザヤが多い状態で買い続けると損失になっています。

コンタンゴによる減価の真意

これがいわゆるコンタンゴによる減価というものです。これを一般的にはロールオーバーによるコストと言いますが、実際はロールオーバー(期近と期先の価格差)によるコストではなく、新規買値より決済値が安い事が多いからだと分かります。

価格調整額はロールオーバーによるコストを公平に負担させるもの

価格調整額の受け渡しによりコストがかからないのではなく、価格調整はコストを公平に負担させるものであり、また価格調整額を受けないようにロールオーバーを繰り返しても価格調整額と同じようなコストがかかっている。
価格調整は疑似ロールオーバーであり、また結果として期近と期先の価格差がコンタンゴによる減価と一致しているものの実際は新規建値より決済値が安いことが減価の要因です。
従って、コンタンゴであっても価格が上昇を続ける様な商品であれば必ずしも買いが不利にならないこともあります。

アービトラージ=サヤすべり取りが誰でもできるCFD

アービトラージの一種にサヤすべり取りと言われる先物の価格差を利用したものがあります。
先物コンタンゴの減価を収益源とするVIXインバースが一時流行りましたが、これはサヤすべり取りをファンド化したものです。
サヤ取り、アービトラージと聞くと何か職人的な技術が必要な感じがしますが、先物を対象とするCFDであればコンタンゴにある先物を売り続けることなく簡単にアービトラージができることになります。

ここで紹介しているCFDはこちら

公開日:
最終更新日:2018/06/27